九州朝日放送制作 「テレメンタリーテレメンタリー」2020年2月2日放送 
“見えない障害”…一命を取りとめた後に残った「高次脳機能障害」に向き合う人たち

 交通事故で高次脳機能障害になった人たちの歩みを紹介したドキュメント番組です。記憶障害になった男性は失業して5年半経ったころ、障害者雇用枠で大手広告代理店に採用されました。女性は体調不良に苦しみながらもフルマラソンを完走します。

 高次脳機能障害を紹介するテレビ番組はまだまだ少ないのですが、こうした番組が出てくることでテレビ制作者が高次脳機能障害を知るきっかけになるはずですし、さらに高次脳機能障害の番組が作られることにつながっていくに違いありません。

 番組を紹介したサイト → 九州朝日放送制作 「テレメンタリーテレメンタリー」2020年2月2日放送 “見えない障害”…一命を取りとめた後に残った「高次脳機能障害」に向き合う人たち

『アエラ』2020年3月2日号
「柳浩太郎『テニミュのリョーマ』が語る高次脳機能障害と舞台復帰」

《2003年、交通事故に遭い高次脳機能障害を抱えた俳優・柳浩太郎さん。仲間たちの協力を得て、今、7年ぶりの舞台に立った》という前文とともにカラー1ページで紹介されています。

 柳さんは、2003年4月、舞台初出演ながら、『ミュージカル テニスの王子様』(いわゆる「テニミュ」)の主役・越前リョーマ役に抜擢されたのですが、同年12月に舞台稽古からの帰宅途中に交通事故に遭って、脳挫傷等の重傷を負い、奇跡的に一命は取りとめたものの、高次脳機能障害などの後遺症が残りました。柳さんは記憶力と注意力、遂行能力などに障害が出たそうです。セリフを覚えるのが俳優の仕事の1つでしょうから、記憶力の障害はつらいものではないかと思われますが、アドリブ力を発揮しているとのこと。

 高次脳機能障害になった人がその後の人生をどう歩むのか――。柳さんの例はモデルケースの1つになるかもしれません。

2020年1月20日付『西日本新聞』医療面
脳損傷 「見えない障害」に 記憶や集中力が低下、感情抑制も難しく

 高次脳機能障害はまだまだ知られていません。本人も大変ですが、どうすればいいか分からず戸惑う家族の心労は計り知れないものがあります。にもかかわらず支援態勢は十分ではありません。

 そんな現状を九州で取材、記事にしているのが『西日本新聞』です。

 記事のリンク → 2020年1月20日付『西日本新聞』医療面 脳損傷 「見えない障害」に 記憶や集中力が低下、感情抑制も難しく

2020年2月24日付『西日本新聞』医療面 

「安楽死も考えた」PTSDや不眠症…夫が高次脳機能障害に、妻の苦悩

 高次脳機能障害になった夫が暴力を振るうようになり、妻は思い詰めます。夫に身体障害がないため行政に頼ることができず、相談できる場がないのでした。
 周囲からは差別的な扱いを受け、家族は追い詰められていきます。

 記事のリンク → 2020年2月24日付『西日本新聞』医療面 「安楽死も考えた」PTSDや不眠症…夫が高次脳機能障害に、妻の苦悩

2020年2月27日付『毎日新聞』神戸版

 交通事故で高次脳機能障害になった大学生(19歳)の将来図を紹介しています。大学生は中学1年の時に交通事故に遭い、生死の境をさ迷いました。2カ月後に意識を取り戻しましたが、高次脳機能障害の症状に悩まされます。

 そんな経験から、誰とでも集うことができるカフェをやることを考えるようになったようです。母親のサポートを受けながら夢に向かって進む男性を記事は写真入りで紹介しました。

『東スポウェブ』の連載「心肺停止から蘇り日記」

 東京の山手線で心肺停止になり、高次脳機能障害になった医療ライターの女性(50代)が書く連載です。《障害があると自覚できず逆ギレして、多大なご迷惑をおかけしました》と記すなど冷静に自分を振り返り、社会復帰を目指すリハビリの様子を適宜アップしています。連載中なので全体像が見えませんが、客観的に顧みる文章なので、現在進行形ではないと思われます。

『東スポ』は軽いタッチのメディアと言われます。しかし、そんなメディアのサイトに高次脳機能障害の当事者の連載が載ることは決して軽い意味ではないはずです。高次脳機能障害が少しずつ知られるようになってきた証拠と言ってもいいのではないでしょうか。

 サイトの良さは、どこからでも、誰でも、読むことができることにあります。そういう点からも期待したい連載です。

2020年6月26日付『毎日新聞』(東京本社版)社会面連載「ヤングケアラー 幼き介護」4回

 10代のときに交通事故で高次脳機能障害になった母親(51歳)を介護する女性(22歳)を紹介した記事です。女性は実名でユーチューブを使って経験を発信しています。社会に向けての発信を実名ですることに尻込みする人が少なくないように感じますが、実名だからこそ得られるものがあるのだと思います。

 高次脳機能障害の親を介護している子供への支援につながればという願いを込めた情報発信は、同じような立場の子供たちを勇気づけ、支援が広がるに違いありません。ユーチューブのチャンネル名は「元ヤングケアラーたろべえとおかあちゃんねる」です。

2021年9月26日付『毎日新聞』筑後版に掲載された大牟田でのシンポジウム

 1963(昭和38)年に起きた旧三井三池炭鉱炭じん爆発事故は458人の死者を出しました。さらに一酸化炭素中毒患者が839人いて、その中には後遺症としての高次脳機能障害に今も苦しむ人がいます。

 今でこそ高次脳機能障害は知られるようになってきましたが、1963年当時は高次脳機能障害という言葉がまだなく、60年近くもの間十分なケアがなされないまま来たということです。

 シンポジウムでは支援のあり方を探るということですが、今まで気づかれなかったさまざまな原因による高次脳機能障害が注目されるようになるのかもしれません。

2022年7月27日付『毎日新聞』夕刊(東京本社版)社会面トップに掲載された記事「高次脳機能障害 全国数十万人」「『見えない障害』苦悩続く

 大学時代に交通事故に遭った宮崎市の男性(40歳)が高次脳機能障害と診断され、その後見舞われたトラブルなどについての証言で構成された記事です。匿名ですので、それだけ辛い経験であることが窺えます。

 記事によると、交通事故のあと、会話は普通にできるものの、
・自転車に乗れなくなった
・友人との約束を忘れた
・メモを取ることができない
・お金の管理ができない
 などの変化が生じ、人との接触が怖くなって自傷行為に及んだ、ということです。

 記事は《高次脳機能障害がある人は全国で数十万人いるとされるが、確定診断ができる医療機関は限られている。適切な診断やリハビリが受けられずに障害が放置されたり、周囲の無理解に苦しんだりしている人も多いとみられる》と問題点を指摘しています。

 このような記事が増えることで、高次脳機能障害を知るきっかけになり、周囲の理解が促されるのではないかと期待します。